最近はクラウドファンディングで資金を集めて製品化する流れが増えていて、企画にかけるアツい思いやこだわりを身近に感じられるようになりました。
今回紹介する狂斎もまたクラウドファンディングの結果、単行本化された漫画のひとつ。
すぐに人気が出ないと打ち切られる。
新人や実績のない作家に宣伝費がまわってこないことから始まったこのプロジェクト。
SNSでは紙での販売が打ち切られたなど、悲しい情報がまわってくる今の時代、こういう新しい試みは応援したくなりますね。
狂斎のあらすじ
歌川国芳や駿河台狩野家などの元で修行を終えた、甲斐洞郁は、仕事なし・金なしの貧乏暮らし。
毎日誰にも売れない絵を描き、酒に酔い潰れる生活を繰り返し、さらに奇妙な蛙が住み着くようになる。
心の奥底では幼少期に絵の心得を示してくれた、亡き葛飾北斎への複雑な嫉妬心と、自分が世間に認めてもらえない鬱屈な気持ちは大きくなる一方で……。
幕末~明治にかけて活躍した稀代の天才絵師・河鍋暁斎、空白の不遇時代を描く、画鬼道絵巻
ネタバレ注意!狂斎のストーリーや魅力

©ちさかあや/徳間書店
作者・ちさかあやさんの漫画
河鍋暁斎をモデルに描いているが史実通りではない
狂斎のモデルとなっております河鍋暁斎は、幕末から明治にかけて活躍した絵師です。
数多の絵師のなかでも資料が多く人物像がイメージしやすい絵師です。
なので河鍋暁斎を知っている方ほどこのマンガの狂斎と実在の暁斎のイメージが乖離し、首をかしげるかもしれません。
実在の暁斎と狂斎のギャップを楽しんでいただけたら幸いです。
狂斎1巻のあとがきより引用
と作者本人がおっしゃているので、史実どおりに描いている歴史漫画では無いようです。
まぁ、今の時代織田信長が女の子になっていたり。
偉人が異世界転生する漫画があるから別に驚いたりはしません。
ただ、ガチガチの歴史漫画を期待している人は注意が必要です。
高い画力と世界観にとにかく惹き込まれる漫画
漫画には明確なストーリーの流れがあり、1巻を読めばどういう方向に進んで、こういう話が描かれそうだなということがなんとなくわかります。
しかし狂斎は連載してる作品ではないので、天才絵師が狂ったように絵を描くことが話の中心となっている単行本1巻からは物語の想像ができません。
ちょっと小難しい短編漫画とか。
イラスト集も読んでいるような感覚です。
ではこの漫画のどこが魅力なんだと聞かれればただひとつ。
圧倒的な画力!美しさ!カッコよさです!
コマ割の美しさやカバー裏のイラスト。
墨汁と筆で描いたかのような表現。
線の強弱や濃淡に魅了されました。
天才絵師が見えている世界を表現している
常に酒に溺れている狂斎。
「酔うと見えんだ…たまに」
「見えて描けりゃあ毒でもいい」
と絵に酔っている男。
それを間近で見ている人間の嫉妬や惚れこむ様子。
みなぎる自信や時代背景。
どのページを見ても凄いとしか言えません。
面白いかと聞かれれば微妙。
ストーリーがあってないようなものですから。
それを加味しても、自分はけっこう好きです。
こんな表現力がある作品はなかなか出会えるものではありませんから。
狂斎の購入は書店の在庫を探すしかない
狂斎2巻の購入を首を長くして待っていましたが。
まさかのレーベルが出版事業を撤退したことで、電子書籍ならびに紙も販売停止。
権利が作者に戻ったのが唯一の救い。
いつかまた続きを描いてくれるのを待っています。
狂斎を無料で試し読みする方法
狂斎は作者・ちさかあやさんのnoteから無料で1話を試し読みできます。


