金も名誉も女も全てが手に入るけど、仕事に追われ、責任感が重くのしかかり、誰かに命を狙われる。
そんな日々を過ごしたいかと言われると、絶対に嫌ですよね。
最近の若者は野心が無いとよく言われますが、自分もそのひとりで、やりがいのある仕事なんかよりも楽で、ちゃんと心に余裕を持てる生活を重視したいものです。
さて、今回紹介する王国物語は、自分が望もうが望まないが、王座を争う宿命にある血縁者たちがどのような覚悟を決め、決断を下すのか描かれる寓話ファンタジー漫画。
シンプルがゆえに血の気を感じない絵柄が、人間らしい感情や表情を色濃く表現していて、まさに大人向けのエグい物語となっています。
王国物語のあらすじ
【ネタバレ注意】王国物語を読んだ感想
中村明日美子の作品
解像度の高い醜い権力争いが描かれる漫画
今の時代では、その考え方は古いよって言われること間違いなしな、仕事の跡継ぎは長男問題。
本人が望めばともかく、職業選択の自由がある現代。
自分の子供には好きなことをやらせて、お店を一代で終わらせる考えを持つ親もいることでしょう。
ただ、何十年何百年続く老舗のお店や、その土地の名家はまた話が変わってきそうですよね。
自分は就活しなくていいやん!
って能天気に思いますけど……。
後継者不足に悩むお店が多い現状。
他人には理解できない色んな不満やしがらみがあるのでしょう。
兄弟でもめるってのが一番最悪なパターン。
他人なら連絡を絶てば万事解決ですけど。
血縁者はそうはいきません。
積もり積もった恨みが爆発したら怖いですよね。
歴史を辿っても、兄弟で権力争いした話はいくらでもありますから。
ファンタジーにおいても後継者が欲にまみれて好き放題やってる長男と、それに不満を持っている次男以降や妾の子みたいな対立はよく描かれます。
王国物語は権力に狂わされる人間の解像度がとてつもなく高くて、エグい。
中村明日美子先生のシンプルな絵柄が、人間の内面や表情を際立たせて感情を抉ってくるんですよね。
子は親の背中を見て育つとはよく言ったもので。
腐った環境で育った結果、どんどん負のループにのまれていく描写があって、けっこうキツイ。
アイツのようにはならない!
ではなく、屍の上に立つ覚悟。
優しさだけでは国を動かすことは出来ないって方向で、物語が描かれるのが大人向けって感じですね。
面白さを期待して読む漫画では無い
この作品を子供のときに読んでいたら、魅力的に感じるかといえば、正直微妙。
ただ、色んな作品を読み漁る大人になった今。
中村明日美子さんの作品はとても新鮮に映ります。
中村明日美子さんの絵柄はとてもシンプルで、背景は必要最低限。
だからこそキャラクターの言動に、より目を奪われます。
皇子として育てられたアーダルテと、幽閉されて育ったアードルテが出会い、裏切り、共に旅立ち、同じ人と結婚し、別れるという、壮絶な人生を描いたエピソード。
そして英雄といわれた王に毒を持った側近が、共に人生を終えるまでのエピソードが描かれる。
信頼を裏切るまでになにがあったのか。
どれも喜劇ではなく、悲劇。
楽しむタイプの漫画ではないが、ファンタジーのなかでもダークな世界観を好む人や、小説をよく読む人、ドラマや映画が好きな人にはオススメできると思います。
【最新刊】王国物語5巻の発売日
- Q王国物語5巻の発売日はいつですか?
- A
2024年1月18日発売予定です。