ミステリー小説やライトノベルが原作の漫画はよくあるけれど、歴史に名を残すような文豪の小説がコミカライズされているとは思いもしませんでした。
今回紹介するペルシャの幻術師は、梟の城で直木賞を受賞した小説家・司馬遼太郎さんの幻のデビュー作とも言われる作品。
十三世紀のペルシャを舞台に、籠の中の美女を奪い合う男二人という三角関係と、嫌悪感とは裏腹に昂る主人公の複雑な心理描写の漫画になっています。
ペルシャの幻術師のあらすじ
ネタバレ注意!ペルシャの幻術師を読んだ感想
原作・司馬遼太郎と漫画・蔵西の著書
静止画は緻密だがキャラクターの動きは大味で豪快
大体の漫画は、関連情報で表紙をみたことあるんですけど、ペルシャの幻術師に関しては、本屋で初めてその存在を知りました。
それもそのはず、本作は週刊文春で連載。
どうりで情報網に引っかからないわけです。
表紙の出来栄えはまさに圧巻。
ヒロインの幾多にも編み込まれた金髪の美しさに目を奪われ、気づけは手に取っていました。
先に述べておきますが、電子書籍と単行本で購入を迷うなら、別に電子で良いと思います。
海外の歴史が題材になっている漫画らしく、装飾品の模様や風景の作画は緻密ですが、主要キャラ以外の作画はわりと大味な印象を受けると思います。
漫画をあまり読まないであろう中高年が読者層の週刊誌なので、コマ割りは大きめで読みやすさ重視。
情報量が少なく、流れるように物語が進んでいくので、美しい場面が強く印象に残ります。
嫌悪と同時に高揚するヒロインの人間らしさが魅力
十三世紀、ペルシャ高原の町・メナムを攻めたモンゴル軍を率いる大鷹汗ボルトルは、そこでナンという女性に見惚れ、自身への愛を求めます。
力で屈服させるのではなく、ナンが心と体を自ら開くのを待つボルトル。
しかし、町に血を流させた張本人に、ナンが簡単に惚れることなどありません。
強さを誇ることでしか、女性を口説く術を知らないボルトル。
逃げることもできず、籠の鳥となっているナン。
そんな二人の前に現れた、ボルトルの命を狙う幻術師・アッサム。
嫌悪感を抱いていた戦いに、いつの間にか高揚している自分に気づくナン……というのが物語の概要。
戦いに明け暮れた時代らしく豪胆なボルトルは、英傑でありながらまるで少年のよう。
そんな彼が恋心を抱いているナンは、悲劇のヒロインでありながら、そう感じさせない不思議な魅力を持っています。
事実は小説よりも奇なりと言いますが、本来の人間の感情や性格は、言葉一つで言い表せないくらい複雑なもので、ナンからはその人間らしさを感じます。
ボルトルへも憎しみから心を閉ざすということはなく、ただ単に彼が好かれる方法を知らないだけ。
二人の前に現れたアッサムが物語をどう動かすのか。
幻想と愛と滅びの物語ということで、続きが楽しみです。
【最新刊】ペルシャの幻術師2巻の発売日
ペルシャの幻術師2巻は2022年5月20日に発売予定です。
ペルシャの幻術師を無料で試し読みする方法
ペルシャの幻術師は文藝春秋が刊行している雑誌・週刊文春で連載中なので、pixivコミック内のレーベル・文春コミックより無料で第2話まで試し読みできます。