失敗も成功も、色んな経験が人格形成に影響を及ぼしていると思うんですけど、もしも記憶喪失になって全てを失ったら、自分はどんな人間になるんだろうかって時々考えます。
さて、今回紹介するパンダ探偵社は、徐々に動植物に変化し、やがては人間ですらなくなってしまう奇病におかされた人達が余生に向き合う姿を描く漫画です。
不治の病におかされた人達の葛藤や残された側の心情、儚くて切ないヒューマンドラマに胸が締め付けられる心理描写が魅力の漫画でした。
パンダ探偵社のあらすじ
【ネタバレ注意】パンダ探偵社を読んだ感想
澤江ポンプさんの作品
探偵物ではなく病気と葛藤を描いている人間ドラマ
ネームも、心を映す豊かで詩情溢れる絵も研ぎ澄まされすぎて、同業者として怖くて読むとき薄目になっています。
『ラブロマ/金剛寺さんは面倒臭い』――とよ田みのる最新天才作家・澤江ポンプの不穏な抒情、機微にあふれる豊かな人間描写、堪能しました。売れてくれ、澤江!
『レイリ/バイオレンスアクション』――室井大資澤江さんは、優しい目のまま、人間の矛盾だらけの本質を見続ける勇気を持った漫画家さん。本当に憧れます。
パンダ探偵社1巻より引用
『メタモルフォーゼの縁側』――鶴谷香央理
普段は帯コメントが購入の判断材料になっても、決定代になることは無いんですけど、今回に限ってはめちゃくちゃ影響しましたね。
このマンガがすごい2019オンナ編で第1位に輝いた、メタモルフォーゼの縁側の作者・鶴谷香央理さんや、同じくオトコ編で第2位に選ばれた、金剛寺さんは面倒臭いの作者・とよ田みのるさんに、ここまで言わせる漫画って凄く気になりますよね。
で、肝心の物語はというと、徐々に動植物に変化していく不治の病を患い、パンダの風貌になった主人公が学生時代の先輩と、変身病に関わる案件専門の探偵業を営んでいくというもの。
この病気の行きつく先は、人間としての記憶も心も失うという残酷なもの。
主人公はパンダになりかかっていて、人間としての終わりが間近に見えているぶん「忘れられないからヒトなんじゃないか。ヒトなんじゃないかよ」という強い想い、葛藤を抱えています。
そしてそれは、変身病に関わる登場人物全員に言えること。
トリになりかけている少女は嘘に敏感。
イルカになりかけている水泳選手は全てを失い。
シカになりかけているおっさんは動物としての本能に目覚め。
植物になりかけている少女はプレッシャーと戦っている……。
暗闇を抱えながらも光を探そうともがく人間らしさが濃く描かれていて、一度読んだらなかなか忘れられないインパクトがありました。
強烈な動物の本能に怖さを感じる
変身病が進行し「肉が違う、骨が違う、血ィが違う」と、笑顔で狂気にまみれ、人間の心を失った男に主人公が“コイツころす”と、動物的に思ってしまったシーンはかなり印象的でした。
自分の身体が変化するということは、心だって動物に近づいてもおかしくありません。
変身病患者の最期を見届けながら。
自分の行く末に不安を感じながら。
残りの人生を全うする主人公が何を想うのか。
儚くも切ない人間ドラマを見届けたいと思います。
【最新刊】パンダ探偵社2巻の発売日
パンダ探偵社は最新話の更新がされていないため、2巻の発売日は未定です。