自分は今までシリーズ物の漫画しか購入してこなかったんだけど「短編漫画もいいなぁ」と価値観を変えてくれるような衝撃の出会いがありました。
今回紹介する夢中さきみには、変人というかマイペースな男子高校生たちのシュールな日常であったり、胸がスッと軽くなるような話があったり、冒頭15ページで3回も笑わせてくるような短編漫画。
ギャグ漫画ほど派手さは無いし、キャラクターにこれといった特徴があるわけでもないんだけど、ボソッと放つセンスのある一言がツボにはまる漫画でした。
夢中さきみにのあらすじ
ネタバレ注意!夢中さきみにを読んだ感想
作者・和山やまさんの漫画
夢中さきみにの作者・和山やまさんは女の園の星という漫画を連載中で、9月にはカラオケ行こ!という単行本が発売されます。
林というマイペースな少年が関わる物語
短編集と聞くと、別世界の物語の集合体というイメージがあったり、文学っぽい雰囲気を醸し出していて、難しい印象があるかもしれない。
だが、本作の場合は林という少年が登場する物語とうしろの二階堂という物語の、大きく分けてふたつなので、短編集を初めて手に取った自分には読みやすかった。
中高一貫校に所属する彼らの学友に、林というマイペースな少年が登場するのだが、それがあまりにシュールで面白すぎる。
体育祭の借り物競争で、かわいい人というお題で連れていかれて「僕のこと橋本環奈だと思ってたの?」と、そこから1ヶ月も僕かわいい?とウザからみしたり、パンダの着ぐるみで友人の家に行って職質されたり……。
はたまたSNSで仮釈放と名乗っている林が、文学少女とのあいだでラブロマンスがあったり、いじめの第三者になったりと、多くの出来事に林が関わっている。
一言で変人と言いたいところだが、読んでいるうちに“そもそも普通ってなに?”と思うようになってしまうのだから、この漫画は凄い。
うしろの二階堂では友情が面白おかしく描かれている
二階堂という陰気で暗い少年は、うわさが伝言ゲームのように形を変えていき、誰からも話しかけられることがないほど、クラスどころか学校で孤立してしまったという。
そんな二階堂の前の席に座ることになった生徒視点で、物語は描かれていく。
二階堂はもともと人気者だったにもかかわらず、女子からの“激ヤバなプレゼント”によって人間関係にトラウマができて、変人を演じている。
いじめというほど重いテーマが描かれているわけでも、感動的な友情というわけでもないんだけど、読み終わると、こういう話いいよな~としみじみ思う内容になっている。
このマンガがすごい2020オンナ編では第2位に、マンガ大賞2020でも第7位にランクインするなど、短編漫画としては異質な存在。
言葉にするのがすごく難しい、なんとも不思議で、とても面白い一冊でした。
キャラクターたちは誰もが魅力的で、ときたま「心に余裕があるうちは意味のないことをしていたいんだ」と良いことを言っていたり、気づけば二回目を読み始めている自分がいた。
夢中さきみにを無料で試し読みする方法
夢中さきみにはエンターブレインのBEAMCOMIXより出版されている短編漫画なので、ComicWalkerより無料で第2話まで試し読みできます。