住居として優れているかはさておき、狭い空間を最大限に有効活用したミニマリスト向けの物件は、内見だけでもしたいって気持ちになりませんか?
拘りを感じられるデザイナーズ物件は見ているだけで楽しいですし、引っ越しが趣味になっている人の気持ちも分からなくないですよね。
さて、今回紹介する一級建築士矩子の設計思考は、タイトルからも見て分かる通り、合格率が10%程度と言われている難関国家資格のひとつである一級建築士の、実務が描かれる職業系漫画です。
一級建築士矩子の設計思考のあらすじ
ネタバレ注意!一級建築士矩子の設計思考を読んだ感想
作者・鬼ノ仁さんの著作
面白いという評価にふさわしい読み応えと満足感
自分は漫画の感想を書くようになってから、面白いという言葉をほとんど使わなくなりました。
ギャグ漫画に対しての誉め言葉ならともかく。
ラブコメ漫画のヒロインが可愛い、少年漫画のキャラや技がカッコいいみたいに、面白いって主観によるところが大きいじゃないですか。
人によって何を評価するかって全然違うのに、面白いって言葉ひとつの雑な評価で、漫画の価値が左右される現状ってなんかなぁって、モヤモヤしています。
どういうストーリーで、どういう漫画に近くて、購入を検討している人の判断材料になる情報を与えようとしている人間が、むやみに使ってはいけない言葉だと思うんですよね。
だからこそ、読み終わった後に“面白かった”と素直に感じたのが新鮮で、自分でも驚きました。
漫画の読み方も人それぞれ。
自分の場合は1回で深く読み込まず。
サッと読むのを何周かして、最終的に見落としを無くすスタイル。
比較的読むのは速いほうなんですけど、それでも他作品の倍は、時間が掛かったと思います。
専門知識が多くて堅苦しいの一歩手前で収まっている
一級建築士矩子の設計思考はタイトル通り、難関国家資格を所有し、立呑み併設の個人事務所を営むお姉さんが主人公の職業系漫画です。
目次が建築確認申請書(第四面)に倣った書き方をしていて、漫画好きとしてはこういう細かい遊び心や拘りを感じられると、グッときますよね。
独立したばかりの矩子にデカい案件が舞い込んでくる!なんてことはなく。
ご近所付き合いで建築関連の相談に乗ったり、知識を活かして悪徳業者とのトラブルを解決したり、今まで培ってきた人脈をもとに、小さな仕事をコツコツとこなす姿が描かれます。
実測という物件を測って図面化する作業の背景は、当然ながら部屋・用語・図面・説明口調で圧が凄いんですけど、どのコマも構図に工夫があって読みにくさは感じません。
このバランス感覚が絶妙で、本当に凄い。
詰め込みすぎの手前、読み応えがあるの最大限。
あとがきにて、鬼ノ仁さんは一般の方に意見を貰っていたと述べているんですけど、話を膨らませているのではなく、削り取って1冊に綺麗に収めているように感じられます。
酒飲みの日常で割ることでいい塩梅になっている
矩子の職業病ともいえるプロの視点を通した街ブラ解説や、お酒の紹介は興味深いだけでなく、読者にとっても一息つける幕間的な存在になっています。
ガチガチの職業系漫画と、ほのぼのとした日常系漫画の両方の顔を持ち合わせていて、読んでいてとても楽しい漫画でした。