あなたは幽霊を信じているだろうか?
ちなみに私はYES。
それが存在なのか現象なのかは分かりませんが、色の見え方や音の聞こえ方もひとによって千差万別なので、視えるひとがいてもおかしくないだろうって思っています。
さて、今回紹介するいまかこは、幽霊の存在に苦悩し、またその力にすがりたい人間のリアルな感情を描く短編漫画。
いまかこのあらすじ
ネタバレ注意!いまかこを読んだ感想
作者・松浦だるまさんの漫画
幽霊という設定を上手く使っている漫画
幽霊が視えると言えば、周りから嘘つき扱いされるのは目に見えています。
ホラー映画や心霊映像はこの世に溢れていて、コンテンツとして受け入れられているのに、なぜか信じていないという人が多い不思議。
もちろん嘘やフェイクも交じっているでしょう。
でも全部を偽物と片付けてしまうのは無理があるというのが自分の考えです。
本作の何が凄いのかといえば、霊をそんなに描いていないことです。
普通は禍々しい幽霊を描くことで恐怖を演出するはずですが、いまかこでは亡くなった人間の悩み、そして残された人間の後悔や葛藤を中心にストーリーが組み立てられているんです。
音の幽霊と場所の幽霊という視点の面白さ
本作で描かるのは場所の幽霊と、音の幽霊。
美術系の塾講師として働く鶴見には、今ある建物とダブって昔の建物や物が見えることがあり、それを総称して場所の幽霊と呼んでいます。
そんな鶴見は、洪水で彼女が行方不明になってしまった過去があって、ふたりが住んでいた跡地には場所の幽霊が視えているという……。
働くことで気を紛らわしている鶴見が新しい生徒に絵を教えることになるんですけど、早淵今という中学生の少女は常にイヤホンをつけている問題児で……。
しかし、それには幽霊の音が聞こえるという理由があり、彼女はそのことでずっと悩み続けていました。
早淵にとって、鶴見は初めて出会った共感者。
いっぽうで鶴見は、場所の幽霊が視えている場所で、早淵に音を聞いてもらいたいと頼みます。
早淵は鶴見の事情を聴いてしぶしぶ受け入れますが「何も…聴こえない。ここには何もいないよ」と嘘をつく。
早淵が聴いたのは鈴の音…それは明らかに生きている者を呼んでいる音でした。
愛する者が亡くなったと知ったときの絶望感。
それは読んでいて、とてもつらいものがありました。
そしてもうひとつのエピソードでは絵を描くことに悩み、自殺してしまった大熊という生徒の音を早淵が聞いたことで物語が展開されていきます。
場所と音の幽霊という視点や、ストーリー構築はさすがだなと感じるいっぽうで、テーマがかなり重いので万人受けするタイプではありません。
とはいえ、読後に余韻が残るような漫画が好きな人にはおすすめなので、興味があるならぜひ読んでみてください。
いまかこ2巻の発売はあるのか?
いまかこを無料で試し読みする方法
いまかこは講談社から刊行されている漫画誌・イブニングで連載されていたので、コミックDAYSより第1話を無料で試し読みできます。