- Q水平線のネラは面白い漫画でしたか?
- A
私は好きです。ただ読む人はかなり選ぶと思います。言うなればおでんとか味噌汁、郷土料理なんですよね。年齢を重ねて、出汁の旨味やありがたみに気づくみたいな。キャラデザでごまかしていない内容勝負。第1巻を丸々使ったプロローグに惹きこまれますよ。
- 作者
- 漆原友紀
- 出版社
- 講談社
- 掲載誌
- アフタヌーン
- ジャンル
- SF
- 既刊
- 第1巻
【ネタバレ注意】水平線のネラを読んだ感想レビュー!

point①.30代以降におすすめする玄人向け漫画
漫画が上手すぎる……。
水平線のネラ第1巻読了後の率直な感想です。
ただ、これがおそらく万人受けする面白さじゃないんですよね。
先述したように料理で例えるなら、おでんや味噌汁、肉じゃがみたいなイメージなんです。
具材も多くて手間暇かかるし、出汁の繊細な旨味や温かさが染み渡る素晴らしい料理。でも茶色味が強くて地味なビジュアルから若者のSティアにはなれない悲しき存在。だがしかし30代になると一周回って、これがめちゃくちゃ美味しく感じるんですよね。
水平線のネラはまさにそんな漫画です。キャラデザや画風が若者向けじゃないので、万人受けしないんだろうなと思いつつも、逆に言えば誤魔化しがきかないってことなんですよね。内容一本で勝負しなきゃいけない。そのなかで複数の作品を出版している漫画家の腕は信頼できます。
昔の音楽番組の映像とか歌手のレベルが異次元じゃないですか。グループよりも圧倒的にソロが多いし、ゆったりとした曲調だし、音数も多くなければ、オートチューンみたいな技術もないから、本物のマイクパフォーマンスって感じ。
個人的に水平線のネラは、田島列島先生の『水は海に向かって流れる』鶴谷香央理先生の『メタモルフォーゼの縁側』あたりと読んでいる感覚が近いと思いました。


point②.ネラという謎の物質と思念が人魚を生み出す世界観
「水」とは「何も混ざっていない透明な液体」ではなく「『水』という特殊な物質」だという事を我々は忘れがちだ。
水平線のネラ第1巻1p
水平線のネラは海面上昇の危機が迫る近未来もしくは別世界の日本を舞台に描かれるSFファンタジー漫画。あらすじにも記載されていますが、私たちが飲んでいる水ってそもそも特殊なんだよって語り口からの人魚が現存しているファンタジー要素も二度美味しいですよね。
しかも、人魚は水中に溶け込んでるネラって物質に人の思念が混入した存在だと説明されていて、どこか幽霊的なオカルト漫画っぽい湿り気を帯びています。
第一話では美凪という少女を主人公に、ナギという人魚を探している少年が出会うことで物語が進行します。美凪はナギが貸してくれた一冊の本のなかで、ジョセフ・バクスターという植物学者が人魚の心臓を取り込むことで不老不死になる説を唱えたと、そして200年近く前の写真にナギによく似た人物を発見しています。
美凪はそんなわけないかと一蹴しながら、人魚が絶滅したのはあんたのせいじゃんと、海を眺めながら物思いにふける描写は印象的でしたし、驚くことに美凪は第一話で役割を終了します。
てっきり私は一般人の主人公×特異な過去を持つパートナー的な構成で物語が進むのかと思えば、ナギの不老不死や『今何を探していて、過去に何があったのか』と、物語の輪郭をハッキリさせる一話完結型の主人公として美しく幕を閉じています。
point③.第2話にして明かされるナギの過去と、巧みな時間軸の構成
そこから第2話の本当の主人公・ナギの過去に物語がスイッチするわけなのですが、水平線のネラは近未来から先へと時間が進んでいたのに対して、第2話にして200年近く前にさかのぼるわけです。
人魚の心臓が不老不死を与える説を提唱したジョセフ・バクスターは、ナギにとって知識を授けてくれた恩人にして、彼は『不老不死になる方法』を探さなければいけない事情を抱えていました。
ふつうでしたら第一話の段階でナギをもっと登場させて、ナギとはどういう人物なのかを深堀させるところ、そこを省略して第二話の過去編と兼ねて描くことで、これだけ時間軸に幅がありながら違和感を覚えさせないストーリー構成は見事の一言です。
ネラという物質、そして人魚の謎。
ナギは一体何を探しているのでしょうか?
興味があるなら、ぜひ読んでみてください!
以上、水平線のネラの紹介でした。
作者紹介
漆原友紀先生は『蟲師』『水域』『猫が西向きゃ』などを描いています。








