あなたは幽霊を信じているだろうか?
ちなみに私はYES……それが存在なのか現象なのかは分からないが、色の見え方や音の聞こえ方もひとによって千差万別で“視える”ひとがいてもおかしいことはないだろう。
この記事ではそんな幽霊の存在に苦悩し、またその力にすがりたい人間のリアルな感情を描く漫画『いまかこ』の感想や魅力を紹介したいと思う。

表紙のインパクトが凄い…
幽霊に対して怖いと思っていることが伝わる……自分は読む前は「ホラー漫画かな?」と思っていたんですけど、強く描かれていたのは身近な人が亡くなって残された人たちの苦悩。
これが1巻完結の短編漫画でよかったと思えるくらい濃密な漫画となっています。


読後はけっこう疲れます
いまかこのあらすじ
「累」松浦だるま最新作!
“場所の幽霊”と呼ばれるもう無い風景がみえる男・鶴見也徒。
死んだ人の“音の幽霊”がきこえる少女・早淵今。
不思議な霊感のようなものを持つ二人の出会いのはてに待つものは救いか、それとも。
いまかこ1巻より引用
ネタバレ注意!いまかこのストーリーや魅力
作者・松浦だるまさんの漫画
いまかこの作者・松浦だるまさんは、土屋太鳳さん主演映画化で話題となり、累計230万部を突破した全14巻からなる『累』という漫画を描いていました。
幽霊という設定を上手く使っている漫画
幽霊が視えると言えば、周りから嘘つき扱いされるのは目に見えている……ホラー映画や心霊映像はこの世に溢れていて、コンテンツとして受け入れられているのに、信じていないという。
もちろん嘘やフェイクも交じっているだろう。
でも“全部”を偽物と片付けてしまうのは無理があるだろうというのが自分の考え。
そして本作の何が凄いのかといえば、霊をそんなに描いていないこと。
ふつうは禍々しい幽霊を描くことで恐怖を演出するのだが、いまかこでは亡くなった人間の悩みやエピソード、そして残された人間の後悔や葛藤を中心にストーリーが組み立てられているのだ。
音の幽霊と場所の幽霊という視点の面白さ
本作で描かるのは場所の幽霊と音の幽霊。
美術系の塾講師として働く鶴見には、今ある建物とダブって昔の建物や物が見えることがあり、それを総称して場所の幽霊と呼んでいる。
そんな鶴見は洪水で彼女が行方不明になっていて、ふたりが住んでいた跡地には場所の幽霊が視えているという。
働くことで気を紛らわしている鶴見。
そんな鶴見が新しい生徒に絵を教えることになるのだが、早淵今という中学生の少女は常にイヤホンをつけている問題児。
だがそれには幽霊の音が聞こえるという理由があり、彼女はそのことでずっと悩み続けているのだ。
早淵にとって鶴見は初めて出会った共感者。
いっぽうで、鶴見は場所の幽霊が視えている場所で、早淵に音を聞いてもらいたいと頼むのだ。
早淵は鶴見の事情を聴いてしぶしぶ受け入れるのだが「何も…聴こえない。ここには何もいないよ」という嘘をつくのだ。
早淵が聴いたのは鈴の音…それは明らかに生きている者を呼んでいる音だった。
愛する者が亡くなったと知ったときの絶望感。
それは読んでいてとてもつらいものがあった。
そしてもうひとつのエピソードでは絵を描くことに悩み、自殺してしまった大熊という生徒の音を早淵が聞いたことで物語が展開されていく。
場所と音の幽霊という視点や、ストーリーの構築の仕方はさすがだなと感じるいっぽうで、テーマがかなり重いので万人受けするタイプではない。
とはいえ1巻完結という読みやすくて読後に響くような漫画を探しているひとは、手に取ってみてもいいのではないだろうか。
いまかこの出版社や連載誌
いまかこは講談社から刊行されている漫画誌・イブニングで連載中です。
本作を書店で探すのなら、官能先生やふたりソロキャンプという漫画の近くにあると思います。

以上、いまかこの紹介でした