マンガを描く漫画というジャンルにおいて『バクマン。』を超える作品は、思い出補正も加わって、正直この先も無いんじゃないかと思っています。
マンガ家設定の主人公とかは何人か思い出せるんですけど、ほとんどが肩書きだけですし、それが話のメインになっている漫画は意外と少ないんですよね。
さて、今回紹介するこれ描いて死ねは、絵が特別上手いわけでもない、ただ特別に好きな漫画があるだけの少女が、ゼロからマンガを描き始める漫画です。
自由気ままに漫画を読んで適当な感想を述べている読者から、面白いとは何か?どうすれば話がまとまるのか?を試行錯誤する創作する側の苦悩が魅力的に描かれています。
これ描いて死ねのあらすじ
【ネタバレ注意】これ描いて死ねを読んだ感想
著者・とよ田みのるの漫画
今の時代や環境に合わせたマンガ家漫画
前述したように『バクマン。』はマンガ家漫画の中で頭一つ抜けている存在。
私自身にとっても、学生時代に好きだった特別な漫画。
好きな漫画ランキングなんてつくったら、トップ10に必ず入れると思います。
じゃあ、これから似たような漫画が出てきたときに、バクマンと比較して切り捨てるのかといえば、それは違うと明確に否定しておきましょう。
なぜなら、バクマンの完結から10年が経過。
時代が大きく変化しているからです。
連載開始当時はスマホなんか普及していませんでした。
紙面での連載が無ければ漫画家として生きていけない時代だったので、死ぬ気で原稿を描き上げるみたいな、熱血漫画に近い印象を持っています。
しかし、今は電子書籍やWebマンガが最盛期を迎えており、漫画を披露する場所が多岐に渡ります。
それ故の難しさも当然あるとは思いますが……。
趣味から仕事に繋がる。
プロを目指さなくても、結果的にプロになった人が大勢いる時代になりました。
これはマンガに限らず、創作活動全てにいえること。
才能を育成するのではなく、野生の天才を引き抜く。
そういうビジネスが目に見えている現状。
夢を追いかける若者にどういう言葉をかけるのか?
それが、これ描いて死ねの魅力に繋がってきます。
趣味として創作活動を推奨する先生の魅力
自分もこれだけ漫画を読んでいますし、漫画をこよなく愛する人間ではありますけど、漫画が人生に影響を与えることは少ないと思っています。
もちろん、モチベーションに関わる良い言葉はたくさん摂取できますが、それを自分の糧にできるかは結局のところ本人の努力や、決断する勇気次第ですからね。
素直に自分自身を褒めるべきでしょう。
さて、本作はイマジナリーフレンドをつくりだすくらいに漫画を愛し、漫画に人生を支えてもらっている少女が、堅物の先生にボロクソ否定される描写から物語が始まります。
漫画好きにとっては衝撃的な物語の導入。
しかし、この先生こそが、安海相に正しい創作活動を教えてくれる存在なんです。
誰が言ったかで、言葉の重みがまるで違う。
彼女の漫画を否定する言葉には質感がこもっています。
息苦しさよりも成長する喜びが上回っている
正直、マンガ家漫画には、夢を追いかける苦悩や現実で息苦しくなる印象がありました。
良くも悪くもみんな大人でビジネスライク。
精神論で努力を続けても、そこに才能が無いと、夢のままで終わる非情な現実を叩きつけてきます。
しかし、本作で描かれるのはその前段階。
とよ田みのる先生の独特な絵柄や表現。
言葉選びに気を配る教職員が指導する環境。
それらが、マンガ家への道を歩み出した少女たちの成長や一喜一憂を、きらきらと眩い日常へと昇華させていて、純粋に読んでいて楽しい漫画になっています。
学業優先、プロを目指さない。
趣味の範囲で楽しむ三ヶ条。
もちろん将来の話など誰にも分からない。
しかし、このマインドを一番最初に持っているかどうかで、人生の軌道修正も容易になります。
読者から創作側にまわったことで、面白いという言葉が、いかに雑で抽象的な評価なのか気づき、客観的に物事を見る難しさにぶち当たる瞬間など。
苦難の数々を、仲間たちと一緒にどう乗り越えるのか。
創作初心者の青春がめちゃくちゃ良い雰囲気で描かれているので、興味があるならぜひ読んでみてください!!
【最新刊】これ描いて死ね6巻の発売日
- Qこれ描いて死ね6巻の発売日はいつですか?
- A
2024年8月8日発売予定です。