散々自己中に振舞って周囲に迷惑をかけているヤンキーが美化されて描かれる作品とか、正直自分は嫌いなんですけど、熱血漫画との相性は認めざるをえません。
今回紹介するブルーピリオドは、一枚の油絵に出会ったことで美大受験を決めたDQNが、周囲の才能と自己肯定感の低さに苦しみながら芸術の世界で生きるスポコン系美大受験漫画です。
ブルーピリオドのあらすじ
ネタバレ注意!ブルーピリオドを読んだ感想
作者・山口つばささんの漫画
初めて熱中できることに出会ったDQNの美大受験漫画
学校をさぼったり、遅刻したり、制服を着崩したり。
真面目ではないんだけど、他人を巻き込むような問題はおこさないし、どのグループの人間とも仲良くできる陽キャって学年にひとりはいましたよね。
本作の主人公・矢口八虎はそのタイプの人間。
成績優秀で世渡り上手。
八虎にとってはテストも人付き合いも、ノルマをクリアする楽しさに近く、結果をだすためにそれなりのコストをかけているだけにすぎません。
他人からの称賛は虚しく感じるだけで、手ごたえの無さを八虎は感じていました。
そんなある日、彼は一枚の油絵に出会ってしまった。
退屈でしかなかった美術の授業。
その絵を描いたのは美術部員の森先輩。
彼女との出会いは後々、八虎の進路に大きく影響することになるんですけど「手放しに才能って言われると何もしてないって言われてるみたいで……」と八虎の虚しさと同じ感覚を持っています。
そのことを嬉しく思ったのか八虎は「渋谷なんですけど……静かで青いんすよ」と、自分が見た景色の話をぽろっとこぼしてしまいました。
しかし森先輩は「あなたが青く見えるなら、りんごもうさぎの体も青くていいんだよ」と、それが当然であるかのように言葉を返すんです。
好きなことで生きる息苦しさと達成感が描かれる
ブルーピリオドはストレートな言葉に突き動かされる漫画。
そこに人間らしい感情は無く。
本音と事実のみで構成された言葉の重みに、ときに救われ、ときに心を抉られる様子が描かれます。
「美術は文字じゃない言語だから」
「好きなことは趣味でいい。これは大人の発想だと思いますよ」
ブルーピリオドの帯には『夢の熱さ、自分の若さに目覚めちゃう伝染性青春漫画』『読むと未来を模索したくなる!俺たちは好きなことを支えにこの世界を生きていく』と書かれている。
まさにその通りで、読んでいるうちに目標に向かって突き進むモチベーションが、湯水のように湧き出てきました。
周囲の才能と自己肯定感の低さに苦しむ主人公
好きなことで生きていく。
趣味が仕事になる時代ですけど、その裏側にはとてつもない努力と才能の壁があります。
八虎は芸術に触れている時間が、他人と比べて圧倒的に短い。
それゆえに、自信が欠落していて。
絵を描く楽しさよりも、難関な美大受験に挑む息苦しさや焦燥感が強く描かれています。
なんのために絵を描いているのか。
だれのために絵を描いているのか。
心が折れて、回復して。
その繰り返しだから読んでいてツライことも多い。
張りつめた空気間のエグさ。
自分だけの世界を持っている人間のカッコよさ。
美術に関する知識を盛り込みながら、ライバルとの切磋琢磨、挫折と成長を描いていて……まるでスポーツ漫画を読んでいるような感覚になりました。
芸術で生きる道を模索している人はもちろん、夢を追いかけている人はぜひ読んでほしい漫画でした。
ブルーピリオドを無料で試し読みする方法
ブルーピリオドは講談社が刊行している漫画誌・月刊アフタヌーンで連載中なので、コミックDAYSより無料で第2話まで試し読みできます。