発売日に購入できず、後回しにした結果、発売日から数カ月経過してしまった漫画を購入する際に、初版帯付きなのかを考えている自分にときどき嫌気がさします。
そもそもプレ値が付く漫画なんて、発売日から何十年も経過しているか、諸事情で発行部数が極端に少ないか、超人気作品の初版などごくわずか。
最近発売された漫画を何十年所持する前提で考えるより、そのとき価値のある漫画を買い集めようとする思考のほうが健全だと思います。
さて、今回紹介する音盤紀行は、娯楽が規制されていた時代を生きていた人たちの想いと音楽が込められたレコードが、過去から現在へ繋がる短編漫画です。
お宝感覚でレコードを収集するマニアが描かれる漫画ではなく、そのレコードが出来た背景や、それを所持していた人の物語が描かれるのが、心が浄化されるようで凄くいい漫画でした。
音盤紀行のあらすじ
【ネタバレ注意】音盤紀行を読んだ感想
趣味への向き合い方を考えさせられる漫画
無機質で怠惰な日々を過ごしている自分は、昔から趣味は何ですか?っていう悪魔な質問に対して、音楽を聴くことって適当に答えていました。
相手がえー何それ!みたいな会話を広げられる趣味がある大人なんて、そうそういないですよね。
映画・漫画・アニメ・音楽・ゲーム・Youtube。
だいたいこの辺りで休日を過ごす人がほとんどでしょう。
それらを趣味としていながら、サブスクを利用して、ベッドの上で時間を溶かすインドア派が増えたことで、儲からん言われて、文化が衰退していく。
新しい作品は売れずに、過去の産物が高騰するのは皮肉なことですね。
もちろん、便利な時代は歓迎ですし、ライト層が増えるのも凄くいいことで、そこからどうやってコアなファンを獲得していくのかを考えないといけません。
かくいう私も、CDは人生で一度も購入したことありませんし、最後に映画館に足を運んだのも記憶に無いくらい遥か昔で、文明の利器に甘えています。
どれだけお金をかけているか。
どれだけ知識を持っているか。
どれだけ情熱をかけているか。
趣味として語るなら、少額でも業界の利益に貢献するファンでありたいと思います。
コレクションの楽しみ方や喜びに気づかせてくれる漫画
音盤紀行はレコード沼にハマっていく音楽好きな女性の物語かと思いきや、まさかの短編漫画集。
自分にとってはゴミでも、誰かにとっては宝物。
所有していた人の想いが、過去から未来へ受け継がれていく様子に、ハッとさせられました。
メルカリなどの個人間取引が身近になりすぎて、今買っておけば5年後にはもっと高く売れるかもしれないみたいな思考が強くなりすぎていました。
本来は、自分が欲しいから買うって感覚が先に来ないといけないのに、これじゃあ転売ヤーと似たようなもんじゃないか……。
まぁ、それは言い過ぎとして。
投資感覚で購入するのは否定しませんし、あくまで優先順位の話です。
物を金のなる木として見るのだけではなく、その値札が付けられている背景や歴史を知る楽しさが先にあるコレクターでありたいと強く思いました。
国際情勢の影響で音楽が規制された過去が描かれる
今現在も、仲が悪い国の製品を互いに規制しあうなんてのはよくあることですが、レコードにまつわる物語として、そういう歴史的背景が描かれるのは魅力的でした。
自分も実物をみたことありませんし、もう、平成レトロなんて言葉が生まれているくらいですから、レコードは立派な過去の遺物です。
こういうレトロな物って、写真や文字だけじゃなくて、時代を感じる独特な匂いもまた良いものなんですよね。
ただ音楽を愛している人たちが自由を求めて、規制をかいくぐり、次世代へと繋げていく。
そして苦しんだ経験が更なる音楽を、そしてアーティストを生み出す。
ただ、マニアが高額な買い物をする漫画じゃなくて、その価値が付く要因を深く描いている漫画。
言葉にするのは難しいんですけど、音盤紀行は読後に余韻が残って、自分の深くに沁み込んでいく感覚があって、凄く良い漫画に出会ったなとしみじみ思いました。
短編集が好きな方、マニアックな漫画が好きな方におすすめの一冊なので、興味があるって人は、ぜひ読んでみてはいかがでしょうか。
【最新刊】音盤紀行2巻の発売日
- Q音盤紀行2巻の発売日はいつですか?
- A
2023年10月20日発売です。